国民年金基金の平成27年度(2016年3月末)決算が公表されました。基金全体の資産額は3.9兆円、これに対して積み立てるべき責任準備金は4.8兆円、積立不足は9千億円、積立比率は81%と苦しい状況です。

国民年金基金連合会における給付確保事業の運用利回り(基金全体の運用利回りに近いと思われる)は、2015年度は▲3.91%でしたが、過去5年、10年、15年の収益率で見ると、公的年金を運用するGPIFなどと比べても遜色ありません。

(左から順に、過去5年、10年、15年の平均収益率)

国民年金基金連合会:9.58%、3.26%、3.69%
GPIF(市場運用分): 6.20%、2.64%、3.01%
企業年金連合会(基本年金等):8.17%、3.04%、4.09%

企業年金連合会が集計している企業年金全体の運用利回りと比べても高くなっています。これは、基本ポートフォリオで資産のおよそ半分を株式で運用することとしており、リスクを取った結果といっていいでしょう。

にもかかわらず積立不足を解消できないのは、運用のハードル、つまり予定利率が高いということです。国民年金基金では以下のように予定利率を引き下げてきてはいますが…

1991年設立当初:5.5%
1995年:4.75%
2000年:4%
2002年:3%
2004年:1.75%
2014年:1.5% 

これらは新規加入者の掛金計算には適用されるものの、既加入者については加入時点の予定利率に基づく掛金が維持されています。

国民年金基金は基本的に終身年金での給付となり、中途解約もできないので古い「契約」がずっと残ることになります。予定利率が下がると新規加入者にとっての魅力は薄れ、新規加入は増えませんから、加入者全体で見た平均予定利率は高いままになっているのでしょう。

20161018a
(…予定利率引き下げの前年に新規加入が増えているのがわかります)

20161018b
(…単純に累計の人数で加重平均しているだけなので、実際の債務の平均予定利率とは異なりますが、やっぱり高いですね)

今のところ国民年金基金の積立不足の問題は一般に注目されていませんが、よほど運用状況が改善しない限りは、いずれ、昨日記事で書いたような国民年金・厚生年金との統合も含め、抜本的な見直しを迫られるのではないかと思います。

誰がどういう形で積立不足を負担するのかについては、議論が紛糾することになりそうですが…。