来年から個人型DCの加入対象が基本的に公的年金の加入者全体に広がることになり、新たに2600万人程度が対象に加わることになります。そしてこのうち300万人以上は公務員です。

公務員は安定した収入があり、金融リテラシーも比較的高いことから、大きなマーケットとして期待されています。先日も日経電子版にこんな記事がありました。
確定拠出年金、法改正で利用拡大のカギ握る公務員
確定拠出年金(DC)法が5月24日に改正され、これまで対象外だった公務員や主婦なども2017年から加入できるようになる。DCは会社単位で加入する企業型と個人で加入する個人型があるが、個人型は制度発足以来、加入者が伸び悩んでいた。しかし、今回の法改正で個人型の対象者が大幅に拡大され、金融機関や運用会社の期待が高まっている。

公務員には民間の確定給付企業年金(DB)に相当する「年金払い退職給付」があるため、DBのある会社員と同様に、個人型DCの拠出限度額は年間14.4万円(月1.2万円)と最も低い設定になっていますが、それでもまとまった人数・金額の加入が期待できると見ているのでしょう。

では、もともと公務員の退職金や年金はどうなっているのでしょうか。

まず、退職金については「退職手当」と呼ばれ、国家公務員は法律で、地方公務員は各自治体の定める条例により支給額の計算方法が規定されています。基本的な計算方法は共通しており、「基本額」と「調整額」の合計により算出されます。

基本額は、退職時の給料月額(基本給月額)に退職事由と勤続年数に応じた支給率を乗じて計算されます。勤続35年以上の定年退職だと支給率は約50となっています(地方公務員については自治体により異なるケースもあるかもしれません)。定年退職時の基本給が40万円だとすると、退職手当の基本額は約2000万円ということになります。

一方、調整額については退職前の5年間の「職務の級」に応じて計算されます。国と地方で、あるいは自治体間での違いはあると思いますが、だいたい課長クラスで1年あたり50万円、5年で250万円くらいになりそうです。上の基本額と合わせると、定年退職時の退職手当の額は2200~2300万円ということになります。

実際、総務省の「平成27年4月1日地方公務員給与実態調査結果」を見ると、勤続25年以上で定年退職した者の平均支給額は約2300万円となっています。

また、退職手当とは別に、年金払い退職給付(共済年金が厚生年金に統合されたことに伴い、「職域加算」と呼ばれていた部分が移行されたもの)があり、こちらについては65歳時点(年金支給開始時時点)のモデル金額(一時金換算)が約421万円とされています。ただ、年金払い退職給付については、掛金の半分は本人負担(給与から天引き)のため、国や自治体からの純粋な退職給付はその半分(200万円程度)ということになります。

ということで、定年退職時の民間の退職金・企業年金に相当する金額の水準は合計で2500万円程度と言えそうです。ちなみにこれは、退職一時金制度と企業年金制度を併用している1000人以上規模の企業における大卒社員の定年退職時の水準と同程度です(厚生労働省の「平成25年就労条件総合調査」による)。

退職金の水準が2000万円くらいになると、一括で受け取った場合に税金がかかる可能性が高くなってきます。非課税枠である退職所得控除は勤続35年で1850万円、勤続40年で2200万円であり(勤続20年で800万円、以後1年につき+70万円)、これを超えた額の半分が課税所得になります。

個人型DCの大きなメリットとして掛金が全額所得控除されることが挙げられていますが、もともと退職金の水準が高い場合には、受け取り時の課税を考えるとまるまるメリットになるわけではありません。「DCはいつ、どのように受け取るのがいいのか?」にも書いたように、受け取り方法についてもよく考えておく必要がありそうです。

ただここ数年の「地方公務員給与実態調査結果」を見ると、定年退職者に対する退職手当の金額はこの3年で毎年100万円ずつくらい減少しています。支給率の減額改定や、給与水準の低下が影響しているものと思われます。10年後、20年後には、「税金を気にしないといけなかったのは過去の話」にならないとも言えません。