「退職金・年金の超キホン」シリーズの6回目です。

前回まではこちらから。
第1回:退職金って何ですか?
第2回:退職金っていくらもらえるんですか?
第3回:退職金は確実にもらえるんでしょうか?
第4回:企業年金って何ですか?
第5回:確定給付と確定拠出の違いは?

退職金は通常、一時金として受け取る選択肢しかないですが、企業年金を実施している場合は年金で受け取る選択肢もあります。ただ第4回でも書いたとおり、実際には一時金での受け取りを選択する割合が多くなっています。

これは、会社側の説明が不十分であることも要因の1つになっている可能性がありますが、それを抜きにしてもいくつかの理由が考えられます。

1.一時金のほうが税金がおトク
一時金で受け取ると税金の計算上は「退職所得」に分類され、一定の金額までは税金がかかりません。詳しくは国税庁のタックスアンサーに書いてありますが、勤続年数が長いほど非課税の金額が大きくなります。

<非課税の金額>
勤続10年:400万円まで
勤続20年:800万円まで
勤続30年:1500万円まで
勤続40年:2200万円まで 
※確定拠出年金の場合、上記の勤続年数は「掛金の拠出年数」と読み替えます。転職している場合でも脱退一時金を受け取っていなければすべての掛金拠出年数を通算できます。

年金で受け取った場合でも「公的年金等控除」という一定の優遇措置はがありますが、非課税の金額はそれほど大きくはありません。こちらも詳しくはタックスアンサーに書いてありますが、65歳未満だと年間70万円、65歳以上だと年間120万円を超えると税金がかかります。国からもらう年金も合算して計算しますので、特に65歳以上は税金がかかりやすくなります。

会社からの退職金と合わせても一時金での受取額が退職所得の非課税の金額に収まるようであれば、一時金で受け取っておいたほうが税金の面でおトクです。 

2.ローンの返済が残っている
住宅ローンの返済などが残っている場合はその返済に充てるために一時金で受け取るケースはあると思います。本来は定年前に完済しておきたいところですが、定年後も返済が続くと負担になりますから、一時金で受け取って繰り上げ返済するのは合理的な選択だと思います。

3.年金を減らされるかもしれない
確定給付企業年金(DB)の場合、企業年金の財政状況が悪化したり会社の経営が傾いたりすると、年金を減らされる可能性はゼロではありません。よく知られている例としてはJALや東京電力があります。

DBで終身年金を設けている場合は実は年金を選択した方が断然有利なのですが、そうした手厚いDB年金があるほど会社に何かあったときには目をつけられやすいとも言えます。年金の支給期間が長ければ長いほど、最後まで予定通りもらえるか分からないから一時金でもらっておこうと考えるのはわかります。

4.手続きが面倒
これは主に確定拠出年金(DC)の場合に当てはまるのではないかと思います。
DCを年金で受け取る場合、
・年金の保険商品を選択する。
・これまでどおり運用を続けながら定期的に年金として取り崩していく。
のどちらかを選ぶことになりますが(保険商品のないプランは後者のみ)、選択肢が多かったり、自分で受け取り期間や金額、受け取り開始後の運用をどうするかを考えないといけないので(後者の場合) 、面倒くさいから全部一時金で受け取っておこうという心理がはたらいても不思議ではありません。

5.金額が少額
これも主にDCの場合に当てはまると思います。 
DBの場合は一定期間(一般的には10年から20年)以上加入していることが年金で受け取れる条件になっていることがほとんどですので、おのずと支給される金額もまとまった額になります。

しかしDCの場合は特にそうした条件はなく、またDBと比べて制度の開始からそれほど期間がたっていなかったり、掛金に上限が設定されている関係で、積立額がそれほど多くないケースが多いと考えられます。

細かい話ですが年金で受け取ると振込のたびに振り込み手数料をとられたりもしますので、金額が小さいとわざわざ年金で受け取ろうとは思わないでしょう。 


… ということで今回は企業年金が実際には一時金で受け取られている理由についてまとめてみましたが、だからといって年金での受け取りにメリットがないわけではありません。そのあたりを次回に書いてみたいと思います