昨日は国民年金基金と個人型確定拠出年金(DC)の共通点と相違点についてまとめてみました。自営業ではたらく人にとって、掛金を所得控除できることと、掛金の上限額は2つの制度で同じです。

ではどちらに入ったほうがいいのでしょうか?

国民年金基金の年金額と掛金額を試算

2つの制度の決定的な違いは、給付建てか拠出建てかということです。国民年金基金は給付建ての制度であり、1口当たりの年金額と支給期間が最初から決まっています。しかも終身年金が基本ですので、公的年金の補完機能としては非常に強力です。

国民年金基金連合会のサイトには、年金額と掛金額をシミュレーションできるページがあります。試しに自分の生まれた年をセットして、最も公的年金に近いB型のプランで試算したところ、以下のような結果になりました。
  • 毎月の掛金額:9,855円
  • 掛金の払込期間:22年(60歳到達まで)
  • 年金の受取額(年間):18万円
  • 年金の受取期間:65歳から終身

一方の個人型DCは掛金建ての制度ですので、掛金は自由に選択できますが、受取額は運用成績によって変わります。年金で受け取る場合は積立金を少しずつ取り崩していき、残高がなくなった時点で支給終了となります。

個人型DCの必要利回り

もし個人型DCで、上記の国民年金基金の試算と同じ掛金で同じ金額を同じ年齢から受け取ろうと思ったら、何%で運用したらいいでしょうか。なお個人型DCの掛金設定は本来1,000円単位であり、年金の受取期間は最大20年となっていますが、ここでは比較のために上記の試算結果と合わせることにします。

結果は以下のとおりです。
  • 年1.0%で運用した場合:83歳で受取終了
  • 年1.5%で運用した場合:86歳で受取終了
  • 年2.0%で運用した場合:90歳で受取終了
先日の記事に書いたとおり、男性の場合86歳は「人並み」に長生きした年齢であり、その年齢まで受け取るためには1.5%で運用できればいいことになります。ちなみにこの1.5%というのは、国民年金基金の掛金計算に用いられている予定利率でもあります。

上記の必要利回りの計算には手数料を考慮していないため、これを考慮すると実際にはもう少し高い利回りが必要になりますが、それでも十分実現可能な利回りだと思います。

ただ日本人の平均寿命は伸び続けています。私が年金をもらう時期には、「人並み」は90歳近くになっている可能性があります。それ以上に長生きすることを考えると、必要利回りのハードルは高くなっていきます。

なお、個人型DCのプランによっては受け取り開始時に終身年金の保険商品を購入することも可能ですが、年金額は抑えめになっています。終身年金の保険商品を購入しようとする人はたいてい健康に自信のある人であり、それでも保険会社が損をしないように、「人並み」より長生きを想定して設定しているからです。

公的年金の支給開始の繰下げ

平均寿命の伸びや人並み以上の長生きリスクを考えると、やはり国民年金基金のほうが確実と思うかもしれません。しかしここで少し発想を転換してみましょう。このブログで何度か取り上げている公的年金の支給開始繰下げを活用するのです。

国民年金は満額で年間約78万円ですが、支給開始を1年繰下げるごとに8.4%年金額はアップします。つまり3年待てば年金額は25.2%、金額にして年間19万円以上アップし、国民年金基金の受取額を上回ります。もちろん、終身年金で受け取れます。

ですから、個人型DCで65歳までに「国民年金+国民年金基金」の3年分、すなわち(78万円+18万円)×3=288万円を積み立てることができれば、実質的に国民年金基金以上の給付を受け取ることができるわけです。

そしてこの288万円を積み立てるためには0.8%の運用利回りでOKです。さすがに今の超低金利だと定期預金だけでは確保できませんが、かなり低リスクの運用でも達成可能な水準です。

個人型DCに加入する際は金融機関を自分で選び、申し込み手続きをし、適切に商品を選ぶ必要がありますが、そこさえクリアできれば国民年金基金以上のメリットを得られる可能性は十分にあると思います。

国民年金基金の財政は大丈夫?

さらに言うと、 国民年金基金には財政の不安要素があります。連合会のサイトを確認したところ、2015年3月末時点の積立不足は5180億円(本来必要な積立額4兆6544億円に対して、実際の積立額は4兆1364億円)となっています。2016年3月末時点の金額は未掲載ですが、株安・円高により不足額は拡大しているものと考えられます。

国民年金基金は給付建ての制度ですから、積立不足が発生した場合は本来的には掛金の引き上げが必要となります。しかし国民年金基金の掛金は途中で引き上げられることはありません。

じゃあどうしているかというと、5年に一度の財政の見直しのタイミングで予定利率を引き下げ、新規の加入者に対する掛金の引き上げを行っています。直近では、2014年度に平均7%の掛金引き上げを行っています。

しかし過去に発生した積立不足を新規加入者の掛金で補填するわけにはいきませんので、新規加入者を増やして全体の予定利率を引き下げつつ、運用収益でカバーするしかありません。国民年金基金連合会がCMまで流して新規加入者を募集しているのには、こうした背景があるものと考えられます(でもその広告費用はどこから出ているんでしょうかね?)。

職能型の基金の1つである司法書士国民年金基金のサイトに、直近の財政見直しの基準日である2013年3月末時点での将来の財政見通しが記載されていました。それによると、以下の前提で2063年(50年後!)に積立不足が解消するとされています。
  • 運用利回り(運用報酬控除後):4.7%
  • 新規加入:年3万人
  • 再加入: 新規加入の7% (金額換算ベース)
  • 増口: 新規加入の25% (金額換算ベース)
…これを達成するのは正直かなり厳しいのではないでしょうか。運用利回りもそうですが、連合会のサイトで確認したところ、2004年度以降で新規加入者が3万人を超えたのは2013年度だけです(2015年度は未掲載)。

昨日の記事の冒頭で「47国民年金基金一本化へ、コスト削減」というニュースを紹介しましたが、運営コストの削減にとどまらず、将来的には給付減額を含めた抜本的な見直しを迫られることもあり得ると思います。

それを考えると、常に自分の積立残高が明確である個人型DCのほうが、 まだ安心できるのではないでしょうか。