リスク分担型企業年金に関して、政省令の改正案に続き、通知の改正案と告示案のパブリックコメントが出ました。ざっと見たところ、4月の企業年金部会で示されたものと同じ内容です。
(リスク分担型企業年金への移行時に「リスク充足額<財政悪化リスク相当額×1/2」なら給付減額と判定する、と明示されている箇所が見当たらないのがちょっと気になりますが…)

リスク分担型企業年金に移る場合に必要な追加の財源については、今回示された規定(案)に基づいて計算することになります。ということで、だいたいどれくらいの額になるのか計算してみました。

なお、リスク分担型企業年金がどういうものなのかは以下の記事を読んでもらえればと思います。
リスクを分けあうわけではない「リスク分担型DB」 
まず1つ目の前提条件として、現時点の積立状況を
・年金資産:100億円
・数理債務:100億円
つまり積立比率100%であるとします。なお、ここでいう「数理債務」は退職給付会計に出てくる「退職給付債務」とは別物ですが、詳細は省きます。

2つ目の前提条件として、年金資産の構成を
・国内債券:30億円
・国内株式:15億円
・外国債券:15億円
・外国株式:15億円
・一般勘定:20億円
・短期資産:5億円
とします。DBの平均的な資産構成割合とだいたい同じになるように設定しています。

この前提をもとに「財政悪化リスク相当額」を計算すると、だいたい35億円くらいになりそうです(詳細は末尾を参照)。そして、リスク分担型企業年金に移る場合にはこの半分、17.5億円に対応する掛金を上乗せする必要があります(でないと移行時に給付減額扱いになってしまうので実施困難)。

この17.5億円(積立比率にして+17.5%分)をどう見るかですが、例えば積立比率が120%を超えているようなケースであれば既に財源はほぼ確保できている状態なので、特に追加の掛金を設定しなくてもリスク分担型企業年金に移行することが可能です。そして積立比率120%というのはそれほど珍しいものではありませんので、資金負担という面では移行にあたって特に支障はないという会社はそれにりにありそうです。

(但し計算にあたっては「定常状態」、つまり制度発足から十分な期間が経過して人員構成が変化しなくなった状態を想定することになっていますので、比較的「若い」制度だと追加負担が膨らむ可能性があります。)

となると、「今までの確定給付企業年金からリスク分担型企業年金に移行して退職給付債務をなくそう」という会社が出てきても不思議はないですが、問題はやはり従業員にどう説明するかでしょうね。ただ単に移行するだけだと従業員にとってのメリットや移行の必要性をを打ち出すのは難しいのではという気がします。

あと移行後の制度運営、特に年金資産運用に係る意思決定には「加入者代表」に参画してもらう必要がありますが、どこまで実効性を担保できるのかという疑問もあります。制度発足時はまだいいとして、運用損失による給付の減額の可能性が出てきたときに、加入者代表としてよく分からん年金資産運用に責任を負うのはけっこうつらいのではないかと(会社側の担当者としても同じでしょうが)。

これについては「専門的知識と経験を有する代理人」を立ててもよいことにはなってますが、その代理人を雇うのは会社側でも問題ないんでしょうかね…?


<参考>「財政悪化リスク相当額」の計算

リスク分担型企業年金における財政悪化リスク相当額は、
①価格変動リスク相当額
②予定利率低下リスク相当額
の合計額により計算される。

①価格変動リスク相当額
資産の種類ごとに定められた係数をかけて合計した額。
国内債券:30億円×5%=1.5億円
国内株式:15億円×50%=7.5億円
外国債券:15億円×25%=3.75億円
外国株式:15億円×50%=7.5億円
一般勘定:20億円×0%=0
短期資産:5億円×0%=0
→合計20.25億円

②予定利率低下リスク相当額
予定利率が1%低下したときの数理債務の増加額。
仮に数理債務の増加率を15%すると15億円となる。

①+②≒35億円

<2016/11/18追記>
従来型のDBでは予定利率を下げると標準掛金の上昇により収入現価が増加しますが、リスク分担型企業年金の場合は標準掛金の見直しを行わないため給付現価の増加がそのまま数理債務の増加となり、影響度が大きくなります。具体的には20%~30%、将来加入者も含めると2倍以上に数理債務が増加するケースもあるようです。
また、それほど成熟していない制度では、定常状態を見込むことで数理債務が足元の3倍に膨らみ、その分財政悪化リスク相当が膨らむというシミュレーション結果もあります(詳しくはこちら)。