先週、企業年金連合会より確定拠出年金実態調査(2015年度調査)が公表されました。この調査は企業型の確定拠出年金(DC)を対象に毎年実施されているものです。
概要はこちらのサイトからダウンロードできます。

調査項目は
  • 設計上の想定利回り
  • 加入者の運用状況
  • 運用商品の選定状況
  • マッチング拠出の実施状況
  • 継続投資教育の実施状況
などとなっており、このうちいくつかの調査結果について紹介していきます。

まずは設計上の想定利回りについて。

想定利回りとは、退職金制度の一部をDCに移行するような場合に加入者がどれくらいの利回りで運用できるかを想定するものであり、その水準に応じて掛金の水準を決定することとなります。

想定利回りを高く設定すると、それだけ多くの運用収益が得られることを前提に掛金を設定しますので、目標とする給付水準が同じでも掛金は低くなります。 加入者の立場から見ると、想定利回り以上に収益を出さないと積立金は設計上の目標水準に届かないこととなるため、想定利回りが高いということは運用のハードルが高くなるということです。

今回の調査結果では想定利回りの平均は2.02%となりました。しかしこれをDCを導入した年度別に見ていくと年々下がっていく傾向にあり、2011年度以降は1.5%前後で推移しています(2014年度導入企業の平均は1.36%)。金利の低下傾向を反映しているものと考えられます。

一方で加入者の実際の運用利回りを見ると、制度発足時から2014年度までの平均は年3.9%となっています。2012年度から2014年度までは運用環境が好調だったこともあり、想定利回りの平均を超えています。

しかし、今回の調査結果には2015年度の実績はまだ反映されていません。2015年度は株価の下落により確定給付型の企業年金では5年ぶりのマイナス利回りとなったため、DCにおいてもマイナスになっている可能性があります。 

また、加入者の運用状況をもう少し詳しく見ていくと、積立金のすべてを元本確保型商品(定期預金等)で運用している加入者が平均して44.0%います。元本確保型100%では現状、ほとんど運用収益は見込めません。つまり平均利回りが3.9%であるといっても、0%に近い人と高い利回りを稼いでいる人とに二極化している可能性があります。

元本確保型100%で運用している加入者の割合は2014年度調査でも44.7%となっており、想定利回りに応じた分散投資の考え方は十分浸透していないように見受けられます。

ただ最近は給与を原資とした選択制のDCなど退職金由来でないDCも広まってきており、こうしたケースでは想定利回り自体が設定されていません。また、DCは本来各自のライフプランに沿って自己責任で運用するものであり、必ずしも想定利回りを目標にする必要はないでしょう。

他の調査項目についての結果についてはまた後日改めて紹介したいと思います。