先週金曜日、確定給付企業年金制度に「リスク対応掛金」と「リスク分担型DB」を導入するための確定給付企業年金法に関する政省令の改正案(パブリックコメント)が公表されてました(昨日気づきました…)。詳細はこちら

基本的には4月28日の社会保障審議会企業年金部会で示された案(パブコメの参考資料として添付)を政省令に落とし込んだものですが、条文にするとこれほどまでに分かりにくくなるのかという思いです。パズルか暗号でも解いてるような気分です。

最も理解に時間がかかったのが責任準備金、すなわち各年度末時点で積み立てておくべき金額についての施行規則の条文です。

現行の条文はこちら。
第53条(責任準備金の額)
責任準備金の額は、当該事業年度の末日における給付に要する費用の額の予想額の現価から、標準掛金額と補足掛金額の合算額の予想額の現価を控除した額とする。
翻訳すると、
今積み立てておかないといけないお金は、将来年金として支払うべきお金から、今後掛金として入ってくるお金を差し引いたものです。
ということです。
用語が難しいので難しく見えますが、言っていることはいたってシンプルです。

これが改正案の条文だとこうなります。
第53条(責任準備金の額)
責任準備金の額は、当該事業年度の末日における通常予測給付額の現価と財政悪化リスク相当額を合算した額から、掛金の額(標準掛金額及び補足掛金額を合算した額又はリスク分担型企業年金掛金額をいう。第3項において同じ。)の現価に相当する額と財政悪化リスク相当額に対応するために追加的に拠出されることとなる掛金の額の予想額(第3項において「追加拠出可能額」という。)の現価に相当する額を合算した額を控除した額とする。
2 (略)
3 追加拠出可能額の現価に相当する額は、財政悪化リスク相当額からリスク充足額(積立金の額と掛金の額の予想額の現価を合算した額から通常予測給付額の現価に相当する額を控除した額をいう。)を控除した額とする。
はい、読み飛ばしちゃってください^^

この条文を足し算と引き算に変換して翻訳するとこうなります。
今積み立てておかないといけないお金=(①+②)-(③+④)
①=将来年金として支払うべきお金
②=運用がうまくいかなかった場合に備えて余分に積み立てておけるお金
③=今後掛金として入ってくるお金
④=②-(今実際に積み立てられているお金+③-①)
ちなみに今の基準だと①-③が責任準備金になります。
で、これを計算していくと、
今積み立てておかないといけないお金=今実際に積み立てられているお金
になっちゃいます。でもこれだと意味がありませんよね。責任準備金は「今実際に積み立てられているお金」が足りているかどうかを見るためのものですから。

じゃあどういうことかというと、④の計算で(今実際に積み立てられているお金+③-①)の部分がマイナスになる場合は0に置き換えて④=②とし、④全体がマイナスになる場合は④を0に置き換える、ということだろうと解釈しています。

今実際に積み立てられているお金+③-①
=今実際に積み立てられているお金-今の基準での責任準備金
ですから、これがマイナスになるということは、今の基準で積立金が不足しているということです。
この場合、新しい基準での責任準備金は(①+②)-(③+②)=①-③で、今の基準の責任準備金と同じです。

一方④全体がマイナスになるということは、
今実際に積み立てられているお金+③-①
=今実際に積み立てられているお金-今の基準での責任準備金>②
ということですから、今の基準に「余分に積み立てておけるお金」を加味してもまだ実際の積立額のほうが上回っているとういことです。
この場合、新しい基準での責任準備金は(①+②)-③で、今の基準の責任準備金に「余分に積み立てておけるお金」を加えた額になります。

つまり、新しい基準での責任準備金はその時点の積立金によって変動し、次のようになるということです。
  1. 積立金が今の基準での責任準備金を下回っている場合は、新しい基準での責任準備金は今の基準と同じ。
  2. 積立金が今の基準での責任準備金に対して「余分に積み立てておける金額」以上に上回っている場合は、新しい基準での責任準備金は今の基準に「余分に積み立てておける金額」を加えた額。
  3. 積立金が1と2の間にあるときは、新しい基準での責任準備金=積立金
積立金が責任準備金を下回る場合を「積立不足」、責任準備金を上回る場合を「積立剰余」と呼ぶことにすると、積立不足については新しい基準でも今までと変わりませんが、積立剰余については運用がうまくいかなかった場合に備えて余分に積み立てておける金額以上に積立金が増えたときにはじめて「積立剰余」とみなされるようになるということです。

こう書くと基準が厳しくなったように思うかもしれませんが、実際は逆です。今までだと積立剰余とみなされて企業がこれ以上掛金を出したくても出せない状況であったのが、余ってる現金を損金算入可能な掛金として出せるようになる、ということです。