平均寿命が伸び続けている日本。長生きすることは本来喜ばしいことですが、少子高齢化が進み国からの年金だけでは心もとない状況では、長生きは一種のリスクでもあります。

このリスクに対応した年金がトンチン年金と呼ばれるもので、早死にすると保険料は掛け捨てになってしまいますが、長生きするとより多くの金額を受け取れる「長寿年金」です。この年金を考案した17世紀のイタリアの銀行家、トンティさんにちなんで名付けられた年金です。

そして、この「早死にすると不利だが、長生きするほど有利になる性質」を「トンチン性」といいます。

現役時代は亡くなることがリスクだったのが、リタイアしたら長生きするのがリスクだと言われるとちょっと寂しい感じもしますが、「お金を残して死んでもしょうがない。生きてる限りはお金の心配をせず楽しく暮らしたい。」という考えの人(そして長生きする自信のある人)には合っている年金だと言えます。

16年前に生命保険会社に入社したとき、新人研修で私のチームはトンチン性のある年金商品の提案を発表しましたが、あまり理解されませんでした…。その後も日本ではあまりなじみがなかったのですが、この4月に日本生命からグランエイジというトンチン性の高い長寿生存保険が発売されました。

年金の受け取り前に死亡したり解約したりした場合は、払い込んだ保険料よりも少ない金額しか返ってこない「元本割れ」となりますが、生存している場合は終身年金を選択することができるため、長生きすればするほど受取総額は増える仕組みになっています。

ところで、確定拠出年金(DC)の世界では、以前よりトンチン性のある商品が存在していました。DCは、実際には一時金で受け取るケースが圧倒的に多いようですが、もちろん年金として受け取ることも可能で、加入しているプランによっては終身年金で受け取ることもできます。60歳までに積み立てた資産で保険会社から終身年金の商品を購入するイメージです。

生きている限りは一定額の年金を受け取ることができるので長生きすれば有利ですが、短期間で亡くなってしまうと60歳時の積立資産よりも受取総額のほうが小さくなる「元本割れ」となる可能性があります。但し、極端に不利にならないように、最低5年程度の保証期間が設定されています(5年以内に死亡した場合でも5年分の金額は保証される)。

ただ今のところ、グランエイジのように60歳前の積立中の期間からトンチン性を発揮する(つまり60歳前の時点で解約して別の運用商品に切り替えたり死亡した場合の給付は元本より小さく設定する代わりに、60歳以降の受取額を大きくする)ような商品はDCにはまだないようです。

現在は超低金利のため普通に利息で運用資産を増やすということがほとんどできません。DCはどっちにしても60歳まではお金を引き出せないわけですから、子どもがいなかったり独立するなどして死亡時の遺族給付は必要ないという状況になれば、その分を将来の年金に回したいというニーズはあるでしょう。

トンチン年金の価値が世の中に理解されるようになるにはそれなりに時間がかかりそうな気もしますが、DCにもトンチン年金が導入され、将来的には選択肢の1つとして定着していくことを期待したいと思います。