30代~40代の子育て世代にとって、老後の資金よりも先に準備しないといけないのは子どもの教育資金かもしれません。子どもの教育資金準備のための金融商品といえば学資保険がありますが、今回はこの学資保険について考えてみたいと思います。

学資保険にも色々ありますが、基本的な機能は次の2つです。
  • 子どもの大学入学等の時期にあわせて必要資金を積み立てる。
  • 家計を支える親が死亡した場合でも、その後の保険料を免除して必要な教育資金を得られるようにする。
このうち、1つ目については特に保険である必要はなく、貯蓄や投資でも準備することができます。2つ目が保険ならではの機能になりますが、この部分だけ取り出した保険商品があります。それが「年金受取にキビシイ企業年金の税制」の記事でも紹介した収入保障保険です。
<収入保障保険とは>
契約者が死亡した場合に、仮に生存していたら得られたであろう収入を補てんするための保険。例えば、保険期間を契約者が60歳になるまでの期間、保険金を月額10万円とした場合、契約者が50歳で死亡したときには遺族に対して10年間毎月10万円の保険金(トータルの金額は 10万円×12カ月×10年=1200万円)が支払われることとなる。
(なお、これと似た性格を持つ保険として逓減定期保険という保険もあります。収入保障保険と異なり、契約者の死亡時には一括で保険金が支払われますが、死亡の時点が満期に近くなるほど保険金は小さくなります。)

学資保険を貯蓄・投資部分と保険部分に分解すると、こんなイメージになります。
図1
通常は、貯蓄・投資で必要積立額をすべて賄うことになりますが、もしちょうど積立期間の半分のところで死んでしまったら、残りの半分は保険から出るということです。この2つをセットにして1つの商品にしたのが学資保険ということになります。

では、学資保険に入るのと、収入保障保険と貯蓄・投資の組み合わせでは何が違うのでしょうか。

まず1つは、貯蓄・投資であれば、いつでも毎月の積立額を変更したり、必要な時期に取り崩せるということです。例えば、地震などの災害や病気などによって、急にお金が必要になった時にも柔軟に対応ができます。

学資保険の場合も解約すればお金は戻ってきますが、死亡時の保障も一緒になくなってしまいます。

一方、貯蓄や投資については自分で計画的に積み立てていく必要があるのに対して、学資保険であれば半ば強制的に保険料を積み立てていくことになるので、解約しなければならないような事態が発生しなければ、より確実に資金を積み立てることができるという考え方もあるかもしれません。

次に、金額的な観点で見た場合はどちらが有利でしょうか?

先月発売された週刊ダイヤモンドの保険ランキングで、学資保険の1位にランクされたソニー生命の学資保険と、収入保障保険で1位にランクされた損保ジャパンひまわり生命の「家族のお守り」を例にとって比較してみることにします。

両社のウェブサイトから得られる情報からほぼ同じ条件で比較できるよう、以下の前提を置くことにします。
  • 契約時の年齢:親42歳、子0歳
  • 契約者の性別:男
  • 積立期間:18年
  • 目標積立額:1000万円
まず学資保険ですが、こちらは月額44,000円の保険料で1000万円を受け取とることができるという結果になりました。

次に、収入保障保険のほうですが、こちらは保障額の設定が最低月5万円となっており、またシミュレーションの設定は月15万円からとなっているため、便宜的に15万円で試算した結果を1/3すると、毎月の保険料は1,925円となりました。
(なお、「非喫煙者健康体」と認定されると、保険料は3割程度安くなる結果となっています。)

毎月の積立額44,000円のうち1,925円を収入保障保険の保険料に回し(これで親が死亡した場合には子が18歳になるまで毎月5万円が給付される)、残り42,075円を貯蓄・投資にあてて運用したとすると、18年後の積立額は運用利回りに応じて以下のとおりとなります。
  • 0%:909万円
  • 1%:995万円
  • 2%:1,092万円
これで見ると、年1%が学資保険よりも大きな金額を積み立てられるかどうかの境目になっています。学資保険の場合、保険料の総額に対して受取金額がいくらになるかという「返戻率」が注目されますが、これを1年あたりの利回りに換算したときに何%になるのか、という観点で見ておくことも重要です。

このマイナス金利のご時世、たとえ年1%でも元本保証で確実に稼げる商品は今はないですが、18年という期間を考えれば、もっと高い利回りで運用できるチャンスは十分にあると思います。逆に、今学資保険に入った場合、現在の超低金利がずっと続けばそれなりに優位性がある一方で、金利が上がった場合にはその優位性はなくなってしまいます。

以上のように、必ずしもどちらか一方がよいというわけではありませんが、家計や経済の状況が将来的に変化する可能性を考えるなら、保険は保障が必要な部分に限定しておき、必要な資金は貯蓄や投資により計画的に積み立てつつ何かあった場合には柔軟に対応できるようにしておくのがよいのではないでしょうか。

教育資金の準備も大切ですが、無駄なく、柔軟に積み立てていくことで、そのあとに来る老後のための資金も確保できるようにしておきたいものですね。