企業年金制度は「年金」という名前がついていますが、実態としては年金ではなく一時金で受け取るケースが圧倒的に多くなっています。その理由の1つとしてあげられるのが、税制の違いです。

一時金で受け取る場合は「退職所得」扱いとなり、例えば勤続38年の場合なら2060万円までは非課税となります。2060万円を超える部分についても1/2にしたうえで他の所得と分離して税額を計算する扱いとなっており、税制上優遇されていると言えます。

一方、年金で受け取る場合は利息がつく分、一時金の場合と比べて税引き前の金額は増えますが、公的年金と合算したうえで雑所得として扱われるため、税引き後の金額では減ってしまうこともあります。「公的年金等控除」という非課税枠はあるものの、退職所得ほど大きな額ではなく、一時金で受け取る場合と比べて税制上は不利と言えます。

ところが、生命保険の場合は税制上の取り扱いがこれとは異なる、ということを最近知りました。

生命保険の種類の1つに「収入保障保険」というのがあります。
<収入保障保険とは>
契約者が死亡した場合に、仮に生存していたら得られたであろう収入を補てんするための保険。例えば、保険期間を契約者が60歳になるまでの期間、保険金を月額10万円とした場合、契約者が50歳で死亡したときには遺族に対して10年間毎月10万円の保険金(トータルの金額は10万円×12カ月×10年=1200万円)が支払われることとなる。
通常の死亡保険(定期保険)と違い、死亡の時期によって受け取る保険金の総額が異なる。

とある収入保障保険のパンフレットを読んでいたところ、保険金を年金ではなく一時金で受け取ることもできるとあり、さらに年金受取と一時金受取それぞれの場合の税務上の取り扱いについては次のような説明がありました。
<年金受取の場合>
一時金受取の金額相当分までは相続税の課税対象となり、それを超える部分については雑所得として所得税の課税対象となる。

<一時金受取の場合>
全額が相続税の課税対象となる。

相続税は非課税の枠が大きく、所得税よりも優遇されています。そして、冒頭に紹介した企業年金の場合と異なり、保険金を年金で受け取る場合も、一時金受取の金額相当までは相続税の非課税枠を使うことができるのです。

企業年金制度は、少なくとも法律上は公的年金を補完するもとのして年金受取をベースに考えられており、一時金受取はオプションの扱いです。にもかかわらず、税制は一時金受取を奨励するような仕組みとなってしまっています。

企業年金においても、少なくとも生命保険の場合と同様に、年金での受取が一時金と比べて不利にならないような取扱いにすべきではないでしょうか。