退職金に関する統計調査の1つに、内閣官房が実施している「民間企業における退職給付制度の実態に関する調査」があります。他の調査と異なり、毎年テーマに応じて調査項目が変わるのが特徴です。

先日結果が公表された平成27年調査のテーマは「ワークライフバランス・女性活躍推進への対応及び高年齢者雇用確保措置への対応について」。

もともとこの調査は、「国家公務員退職手当制度の参考にする基礎資料を得ることを目的として」とされていますが、今回のテーマについては「一億総活躍社会」を連想させます。

高年齢者雇用確保措置(希望者は65歳まで雇用を継続すること)が退職金制度に影響する可能性についてはなんとなくイメージできると思いますが、「ワークライフバランス・女性活躍推進への対応」と退職金との関係についてはあまりピンとこないですね。

実際どんなことを調査しているのかと思ったら、「退職金の算定に使用する勤続期間に育児休業期間を含めるか?」といった、なんというか非常にマニアックな内容でした。このあたりはコンサルティングの現場でも取り扱いを確認する程度で、深い議論の対象になることはほぼありません。

しかしこれは見方によっては、育児休業をどのようにとらえるかということだけではなく、退職金制度そのものをどう位置づけるかという会社のスタンスが表れるところだと言えるかもしれません。

「育児休業を含めた休業・休職期間は一律に勤続年数に含めない」としている会社の考え方はシンプルで、No Work, No Pay、働いていない期間については金額に反映させないのが合理的だというものです。これは、退職金を「給与の後払い」と位置付ける考え方にマッチしていると言えます。

実際そのような考え方をとっているのかどうかまでは分かりませんが、(有給休暇の部分は別にして)休業・休職期間を一律勤続期間に含めない取り扱いは、回答割合としては最も多い結果となっています。

ただ、No Work, No Pay を徹底することだけが従業員間の公平性を担保するものだとは言い切れません。労働力、人材の確保のため、女性が育休から復帰し、長く働くことが期待される社会(会社)においては、一定数の社員が一定期間育児のために仕事を離れることは必然であり、そうした社員が他の社員と比べて不利益を被るのは不公平だとする考え方も十分ありうるでしょう。

そしてこうした考え方は、退職金を「長期の勤続に報いるもの」「老後の生活保障」と位置付けた場合には、育休期間を勤続期間や退職金の計算に含めることにつながります。

育児だけでなく、介護など社会的な要因により、休業・休職期間は決して「例外的な期間」ではなくなりつつあります。これまであまり注目されることのなかった退職金制度における取り扱いについても、今後は議論の対象としていく必要があるのではないかと思います。