22日、日経に「明治安田、企業年金の受託停止」のニュースが流れました。

見出しだけ見ると明治安田生命が企業年金業務をやめてしまったふうにも見えますが、記事の内容を見るとそうではなくて、確定給付企業年金(DB)の資産運用先の1つである「一般勘定」という商品での新規・増額の受け入れを停止したということです。

DBの資産運用業務を行っているのは、生命保険会社のほかに信託銀行、投資顧問会社がありますが、一般勘定のように利回りに保証をつけた商品を用意しているのは生命保険会社だけです。

保証利回りは1.25%に設定されているのが一般的であり、長期金利がマイナスにまで低下してきている現在、これほど「高利回り」を保証している運用商品は個人向けのものを含めて他にはありません。個人保険で予定利率が5%を超えるような昔の契約を「お宝保険」と呼んだりしますが、一般勘定もそのような状況になりつつあります(レベル感は全然違いますが)。

しかし生命保険会社にとっては当然重荷になっており、今回記事に出た明治安田以外の大手生保も、以前から一般勘定の受け入れには慎重でした。最近のマイナス金利によって、他の生保も事実上、新規や増額の受け入れはほぼ停止しているのではないかと思います。

今の金利水準が今後も続けば既存の契約に影響がでることも十分に予想されます。保証利回りの引き下げや、場合によっては解約ということもあるかもしれません。

ただ生命保険会社として一律にそのような対応ができるかというと、なかなか難しい事情もありそうです。大手生命保険会社は、これまでに、中小企業向けに「パッケージ型DB」を一般勘定とセットで提供しているからです。

このパッケージ型DBは、一般勘定の保証利回りと同じ1.25%かそれに近い一定の利率で利息が付いていくような給付の設計になっており、年金資産の全額を一般勘定で運用していても積立不足が出にくい仕組みになっています。しかし、保証利回りの引き下げや、一般勘定での運用そのものができなくなれば、この前提は崩れてしまいます。

生命保険会社にとっても契約している中小企業にとっても、このような状況は想定していなかったのではないかと思います。

なお、最近提供されている新型の「パッケージ型DB」は利息が1.25%に固定されておらず、運用実績に応じて変動する仕組みになっています。生命保険会社としては、保証利率を引き下げたうえで、過去に提供したプランについても実績連動型に見直していきたいところかもしれませんが、1社1社説明に回って同意を取り付けていくのは手間のかかる作業になりそうです。

<2017/2/1追記>
日本生命が、予定利率を引き下げた新たな一般勘定商品の提供を、2017年4月から始めることになりました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

<2017/3/24追記>
明治安田生命も、一般勘定と特別勘定を併用する新たな商品を、2017年4月から販売するとのことです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。