昨日の記事で物価連動国債について紹介しましたが、そもそも物価連動国債とはどういうものなのか、通常の国債と何が違うのかについて、まとめておきます。

通常の10年物の固定利付国債の場合、額面金額100円に対して、発行の都度決められた利率(表面利率)に応じた利息が半年ごとに支払われ、10年後に元本の100円が返ってくることになります。

表面利率は直近だと年0.1%となっていますから、100円に対して半年ごとに0.05円の利息が支払われ、最後に元本とあわせて100.05円が返ってきます。トータルでは101円(=0.05×20+100)返ってくることになります。

これらの金額は物価が変動しても変わりませんから、仮にモノの値段が10年間で2倍になったとすると、10年後に返ってくる100円は今の100円の半分の価値しかないことになります。ですから、みんなが「今後10年間で物価が2倍になる」と予想していたとすると、この額面100円の国債につく値段は50円くらいになるはずです。

しかし実際の入札結果を財務省のサイトで見ると、今月7日に発行された10年利付国債の平均入札価格は101.7円になっています。返ってくるトータルの金額(101円)よりも高い価格で買い取られるという、通常では考えにくい状況になっています。

それでも、今後それより高い価格で他に売ることができれば儲けがでるわけですが、10年持ち続けた場合は利益を得ることはできず、逆に0.7円の損となります。このため、利回りは▲0.069%とマイナスになっています。

一方、物価連動国債のほうは、消費者物価指数(CPI)の変動に合わせて利息と元本も変動します。

物価連動国債についても直近の表面利率は0.1%となっており、今後10年間CPIが全く変わらなければ、固定利付国債と全く同じようにトータルで101円返ってくることになります。

しかし、今後仮に毎年2%ずつCPIが上昇したとすると(つまりインフレ)、利息の金額も年2%ずつ増え、10年後に返ってくる元本は20%(=2%×10年)増えて120円になります。利息を含めたトータルでは121.105円となり、通常の固定利付国債より20円ほど多くなります。

逆に、今後毎年2%ずつCPIが下落したとすると(つまりデフレ)、利息の金額は年2%ずつ減りますが、元本は保証されるため、10年後に返ってくるのは80円ではなく100円です。利息を含めたトータルでは100.895円となり、通常の固定利付国債より0.1円ほど少なくなるだけで済みます。

こちらも実際の入札結果を財務省のサイトで見ると、今月14日発行分の発行価格は104.9円となっており、固定利付国債よりも3.2円高くなっています。この差額が、投資家の今後10年間のインフレ予想を表しているといえます。年率で見ると約0.3%のインフレ率です。

このようにして、固定利付国債と物価連動国債の価格差から計算されるインフレ率の予想値を「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」といいます。

なお、CPIには消費税分も含まれるため、BEIには来年4月に予定されている消費税率の引き上げも織り込まれたものとなっています。

BEIの推移については財務省WEBサイトの物価連動国債のページからダウンロードできるようになっていて、昨年5月くらいから低下傾向にあることがわかります。

つまり、インフレによりお金の価値が下がってしまうリスクを回避したい人にとっては「お買い得」な状況になっています。

もちろん、物価が上がらなければ、通常の国債と比べて価格が割高な分は不利になってしまうわけですが、物価が上昇したときのための保険と考えれば、保険料の安いうちに買っておくのがよいでしょう。

私も、NISA口座にある資金の一部を、物価連動国債の投資信託に振り向けてみることにします。