こんな本を読みました。



以前、同じ著者が書いた「金利史観」を読んだことがあり、非常に興味深い内容だったので、一般向けに書かれたこの本も読んでみることにしました。

キーワードは「買うチカラ」。
物価の変動に対応して、モノやサービスと交換できるお金の実質的な価値を維持するためには、どんな運用をすればよいか、というのがテーマです。

著者は、経済環境に応じて、

①インフレ率上昇期
②インフレ率低下期
③インフレ率安定期

の3つの期間(それぞれの局面は10~20年程度)に分け、インフレ率上昇期には、物価連動国債を金融資産の中核として保有し、株式の比率は落としつつ、エネルギー・資源関連のファンドや、一部コモディティ(金や原油、穀物等の商品価格に連動する投資)を組み入れることを提案しています。

現在は物価変動率がほぼゼロの状態が続いており、上の3つの分類にあてはめるなら「③インフレ率安定期」であると言えます。

著者は、「インフレ率上昇期が本格化する可能性が高まっている時期」、つまり③から①への移行期にさしかかっていると指摘し、物価連動国債が有効な資産であると説いています。

これだけデフレの時代が続くと「インフレ率上昇」と言われてもあまり現実感がありませんが、日銀のマイナス金利導入により、今では長期の債券に投資してもほとんど利回りは付きません。

今後、さらに金利が低下(債券価格が上昇)する余地は非常に限られている一方で、金利が上昇したときには、債券投資による損失は大きくなります。そうした観点から、今のうちに物価連動国債を組み入れておくということは、十分に考えられる選択肢だと思います。

来年2月からは、個人向けの物価連動国債が10万円単位で販売される予定となっており、現在でも投資信託を通じて投資することは可能です(例えばモーニングスターのサイトで「物価連動国債」と検索すると、いくつかの商品が出てきます)。

確定拠出年金(DC)に関していうと、現在は、物価連動国債に投資する商品が用意されているプランは少ないですが、従来の国債に代わるものとして、こうした商品もラインナップに加わるとよいのではと思います。

<2017/4/19追記>
こちらの日経記事にあるとおり、2017年2月開始予定となっていた個人向け物価連動国債の販売は、延期となっています。