労働新聞社のニュースに以下の記事を見つけました。
厚生労働省はこのほど、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法改正案を今通常国会に提出した。今年10月から規模501人以上企業に勤める一定の短時間労働者に厚生年金・健康保険が強制適用されるのを機に、新たに500人以下企業に対する任意適用を強化する。労使合意を条件として、厚生年金等の被保険者とすることができる仕組みを設ける考え。1事業所当たり最大600万円に及ぶ助成金を新設して適用拡大を後押しする。
4月11日付の記事になっていますが、実際に法案が提出されたのは3月11日であり、現在衆議院で審議中です。

上の記事にあるとおり、短時間労働者、つまりパート社員にも厚生年金の適用を拡大していこうというのがこの法案の趣旨です。

現在は、厚生年金の適用対象となるのは、所定の労働時間が週30時間以上の社員となっていますが、今年の10月からは、以下の条件を満たす社員も厚生年金の適用対象に加わります。
  • 週20時間以上
  • 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  • 勤務期間1年以上見込み
  • 学生は適用除外
  • 従業員501人以上の企業
これについては、2012年に成立した年金機能強化法ですでに定められている事項であり、約25万人が新たな適用対象になるということです。

今回提出された法案では、従業員500人以下の企業でも、労使合意によって、他の上記の条件を満たす社員を厚生年金の適用対象にできることとしており、約50万人が対象になるとされています。

今まで適用対象外だったパート社員が対象になると、将来もらえる年金は増える一方、厚生年金保険料(労使折半)を支払う必要が出てくるため、会社の費用負担は増え、本人も手取りの収入は減ってしまうことになります(配偶者に扶養され、自分で保険料を払っていない第3号被保険者であった場合)。

この点に配慮して、従業員500人以下の企業では強制適用を見送り、労使合意による任意適用を広げる方向となっています。

しかし、非正規雇用の社員が増えている現状を考えれば、そうした人たちの年金についても一定の水準を確保するために、基本的にはすべての被用者に厚生年金を適用する方向で見直していくべきでしょう(非正規社員については、会社の退職金も支給対象外であることがほとんどです)。

そのためには、自ら保険料を支払わなくてもよい「第3号被保険者」という制度の見直しもあわせて考える必要があります。

第3号被保険者も保険料を負担するようになれば、その分厚生年金保険料は抑えることができますし(会社と従業員本人の負担が減少する)、パート社員の就労意欲にマイナスの影響を与えることもなくなります。

公的年金の機能を維持していくために重要なのは、何よりも「支え手を増やすこと」であり、これを後押しする方向で制度の見直しが進むことを期待したいと思います。