企業年金連合会のサイトに2015年度の各資産の収益率がアップされました。

国内債券:5.40%
国内株式:▲10.82%
外国債券:▲2.74%
外国株式:▲8.64%

国内債券以外はすべてマイナスになっています。

これに平均的な企業年金の資産構成割合をあてはめて、運用報酬(運用機関への手数料)を差し引くと、企業年金の平均的な運用利回りは▲2%程度となりそうです。2010年度以来、5年ぶりのマイナスです。

一方、国の年金のほうは2015年度から株式の割合を引き上げたこともあり、運用利回りは▲3%程度となりそうです。国の年金の運用資産は2014年度末で137兆円余りとなっていますから、2015年度の運用損失は4兆円を上回る額になると予想されます。

となると、またマスコミが国の年金に対する不安をあおるようなニュースや記事を出してきそうな気がしますが、市場で運用している以上は年によって損失が出ることは避けられません。

2015年度を含めた過去10年間で見れば、平均利回りはおそらく2%台後半、この間の累積収益額は33兆円程度となりそうです。決して高い利回りとは言えませんが、それほど悪い成績ではないと思います。

また、国の年金は企業年金とは違って、事前積立方式、つまり自分の老後の年金を自分の現役時代の掛金で積み立てておく方式を採用しているわけではありません。賦課方式、つまり自分の老後の年金は、そのときの現役世代の掛金で賄う方式をベースにしつつ、事前積立方式の要素もミックスさせたような仕組みになっています。

このような仕組みで運営されている場合、年金制度を維持していくという観点からは、運用利回りはもちろん重要な要素ではありますが、出生率や、女性や高齢者の就業率といった要素も運用利回りと同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素となってきます。つまり、いかに現役世代の掛金を増やすか、ということです。

また、現役世代の掛金が増えるということは、現役世代が受け取る給料が増えるということであり、それは国全体の経済状況を好転させ、長期的には運用利回りを向上させることにもなります。

このように考えると、年金制度の維持という観点からは、単年度の運用利回りがどうこうというよりも、就業率や賃金が上がっているかどうかということのほうが、より重要であることがわかるかと思います。